OUT CASE:シェリー・バーキンの場合

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爽やかな朝日が差し込む中、寝室のベッドの中で金髪ショートカットのあどけない寝顔の少女が、静かに寝息を立てていた。
「あ、お願いクレア……初めてなの……やさしくして………」
その口から、先程までのイメージを粉砕するような寝言を呟きながら、かすかに少女が身じろぎした。
『朝よ、起きてシェリー。朝よ、起きてシェリー。朝よ……』
枕元の目覚まし時計から、パソコンの電子音声でクレアの声そっくりに作られて入力された目覚ましコールが流れる。
「うん……起きる……起きるから………そんな朝からなんて……」
意味不明の言葉を吐きながら、少女はゆっくりと目を覚ました。
「おはよう、クレア」
そう言いながら、シェリーは寝る時いつも抱き締めているクレア抱き人形に優しくキスをした。
「またクレアの夢見たよ。クレアったらもうそれはすごくって………」
ベッドから体を起こしながら、今度は壁に貼ってある超巨大クレアポスターにシェリーは話し掛ける。
よくみると、室内にはクレアの写真だの絵だのが大量に張ってあり、もはや非の付けようのない立派なストーカーぶりだった。
「うん、分かってる。私の体はクレアの物だもの、いつかクレアが私の純潔を奪いに来る日を心待ちにしてるわ」
御近所でも評判の”末期症状のシスコン”と呼ばれている事すら気にもせず、シェリーは独り言を呟きつづけながらパジャマを脱ぎ、シャワールームへと入っていく。

しばらく、鼻歌と共に水の流れる音が響き、やがてタオルだけを体に巻いたシェリーがシャワールームから出てくる。
「お肌はともかく、問題はこっちね………」
タオルを引っ張って自分の胸元を覗き込みながら、シェリーは眉根を寄せる。
「クレアは大きい方がいいのかな?小さい方がいいのかな?」
思春期の少女特有の悩みを、何か思いっきり間違った方向で悩みながら、シェリーは勉強机の上のパソコンのスイッチを入れ、機動する間に手早く衣服を身に着ける。
やがて、着替え終えたシェリーは機動したパソコンを前にするとおもむろにネットに繋げる。
「で、こうしてと」
そのまま手早くペンタゴンにハッキング。
妙に手馴れた動作で次々とセキュリティを破り、目的のファイルに接近。
「こうする、と」
上空スパイ衛星の制御システムに辿り着いたシェリーは、あらかじめ設定しておいた家にカメラアイを調節、そしてその家から出てきたクレアの姿を的確に捉えた。
「クレア!今日もキレイね…」
言葉の途中で、シェリーの眦が釣り上がる。
その背中に、不気味なオーラを背負いつつ、シェリーはクレアと一緒に家から出てきた男、クリス・レッドフィールドを睨みつけた。
(クリス・レッドフィールド!兄、というだけでクレアの傍をうろつく筋肉虫!)
何かを楽しげに話しているクレアとクリスの映像を見たシェリーの手の中で、握っていたマウスにヒビが生じる。
「許さない!クレアは私の物よ!」
怒号と共にマウスを一撃で握りつぶしたシェリーが、拳を握り締めながら立ち上がる。
「そうよ!この時のために、パパはこれを残してくれたんだもの!」
そう言いつつ、勉強机を棚を引っ張り出し、その一番奥底に入れて置いたアンプルケースを取り出す。
「半殺しにした挙句、このGウイルスさえ打てば、怪物になって精々堂々と抹殺できるわ!そうでしょう!ママ!」
数あるクレアの写真の中、ひとつだけある両親の写真に向かって熱く語りながら、シェリーはGウイルスを握り締める。
「うん分かってる!今こそ私とクレアの愛を成就すべき時なの!そのためにはあのマッスルゴリラを消去するのよ!」
ビシッ!と壁に一枚だけ張ってある穴や切り裂き傷だらけ(オマケに数本アイスピックが刺さったまま)のクリスの写真を指差しながら、シェリーはその背に炎を背負う。(ように見えたかもしれない)
「待っててクレア!今日こそ二人の愛の旅立ちの日よ!」
クローゼットの中から何故か有るボーガンやスナイパーライフルを引っ張り出し、ダッフルバッグに詰め込みながらシェリーが(最早反論すべき余地も無い程歪んだ)宣言を上げる。
「首を洗って待ってなさいクリス・レッドフィールド!私とクレアの愛を邪魔する者は死あるのみ!」
銃火器から包丁まで詰まった凶器入りのダッフルバッグを背負ったシェリーが部屋から出撃していく。
シェリーがドアを閉めた後で、両親の写真がなんでか床へと落っこちた。

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