B.A.S. CASE 0 : レオン・S・ケネディの場合

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むかぁしむかしのことじゃった。
海岸を、一人の若者が歩いておった。
名を、冷温という。( 読みにくいので以下れおん )
定職も無く、日がなマッタリと毎日を過ごしておった。
そしてある日、蓄えも無くなりその日の食事もままならなくなって、仕方な〜く釣りにでも行くことにしたのじゃった。
他所からパクって来たスコーピオンのロッドとガマカツのリールを持って、近くの浅瀬へと向かう。餌等は現地調達するしかない。( 先立つものがないから )
いつものように賑やかな朝じゃった。
しかし、れおんが( まだ読みにくいので以下レオン )外に出たとたん、ざわついていた近所に緊張が走る。
村人たちはとうに知っておったのじゃ。レオンの悪逆非道ぶりを。
ある時は隣の助六の畑を荒らし、野菜を根こそぎ闇市に売りさばく。
またあるときは、水が切れた。という口実で兵太の家へ上がり込み、兵太秘蔵の酒「真・あんぶれら大吟醸」を一人で飲み干し、さらに風呂を沸かさせている間に、貯蔵庫の食物を全て運び出し帰って行く。
そして極めつけは子供といえど容赦はしないのじゃ。
通行の邪魔という理由で子供を蹴散らし、子供が旨そうな菓子を食べているとちょっと貸してみろ、と取り上げて自分で食べてしまう。
鬼である。

そんなレオンが何故この村から追い出されないのか?
それは、彼が文字通り鬼のように強く、以前村を襲って村人たちを困らせていた「鬼が島の赤い旋風」という目玉の多い珍種の鬼をレオンが退治した為(勿論しこたま溜め込んだ財宝の為)、村人が無理を言ってこの村に引き止めたのだった。
しかし村長の太助はまだ知らなかったのだ。レオンの本性を。
嫌がるレオンを半ば陥れるようにして引きとめた手前、「てめーうざいんだYO!さっさとどっかへ逝っちまいなベイベー!!」とか言えるわけは無く、実力行使しようとしても誰もレオンにはかなわない。
そんなわけで村人たちはなるべく当り障りの無いように、新たな救世主なる者を待っているだけの悲しい日々を送っていたのじゃ。
さて、外に出たレオンは、緊張して見守る村人を全く気にも止めず、ずんずん海へと向かった。
レオンが釣竿をもって出かけた事が分かり、海まで行くことが予想できるため、しばらくは帰ってこないだろうということで村人達は先程よりも幾分か楽しげに会話にもどった。

+++砂浜の綺麗な海にて+++( 語り手変更 )
海辺に着いたレオンは、困りました。
他に釣りをしているものがいないのです。これでは餌をたかれません。
どうするのでしょうか?皆さん一緒に見てみましょうね〜。

「あぁ?なんで誰もいねぇんだ?畜生共がぁ!餌もなしで俺にどう魚を釣れってんだよ!?」
レオンは一人で怒っている。
すると、ちょっと離れた所に数人の子供達が戯れていた。
「お?いいところにガキ共がいるじゃぁないか!あいつらとっ捕まえて、ゴカイやイソメを取らせたら釣りが出来るな♪」
レオンは悪の思い付きを実行しようと子供達に近づいた。
しかし子供達も、すでに何度もレオンの間の手に晒されている。彼に捕まったら最後、結局は大人でも泣き寝入りするしか無いのだ。誰も彼に逆らう事は出来ない。そこには恐怖による征服しか存在していなかった。
レオンは見つかってはいけない事を重々知っていたので、絶対に見つからないよう細心の注意を払いつつ安全に近づくルートを確立させる。
( よし。このルートでホフク前進で行けば確実に確保出来るな。まってろよ?ガキ共め )
レオンのルートは間違ってはいなかった。
しかし子供の第6感とでも言おうか。子供の中の一人が、レオンの方へ振り返り辺りを見回している。
そして子供は発見した。
うつ伏せになってじわじわと近づいてくるレオンを。
そして目が合う。
お互い硬直した。

先に金縛りから開放されたのは子供たちだった。
「う、うわぁー!!あいつが!アイツがいるぞー!!みんな!早く逃げなきゃ!!!」
「チィッ!見つかっちまったら仕方ねェな!」
お互い叫ぶと、子供達は蜘蛛の子を散らしたように逃げ、レオンはそれを捕まえようとガバッと起き上がる。
しかし子供達は彼らしか知らぬ道や、大人は通れぬような狭い道を選んで逃げる。
当然レオンでは追えない。
これは村の中で、いつ何時レオンに出会うか分からぬ為、大人たちが徹底的に仕込んだ逃げ方だった。
結局、レオンは1人の子供も捕まえる事は出来なかった。
まさに村の大人達の勝利である。いつも悪が勝利するとは限らないのだ。
「クソジャリ共が!一人くらい逃げ遅れろってんだ!これじゃあ誰が餌をとりゃあいいんだよ!」
お前が取れよ。
そんな呟きが画面の向こうから聞こえてきそうである。
そしてふと、子供達が集まっていた所に何かがあるのが分かった。
「ん?何か落ちてるな・・・金目のモノならいただきだが・・・」
またそんな事を言っていると、その何かが動いた。
「なんだ?生き物か?」
多少警戒してその物体に近づいていくと、正体が分かる。
それは裏返しの亀だった。大きさは30センチほどか・・・。
「はぁ。亀かよ。食えもしねぇし売れもしねぇ。まったく。期待させやがってこの亀がぁ!」
まったく役に立ちそうに無い亀に対して八つ当たりをしようとショートダッシュ、そのまま右足を振りかぶる。
すると、突然声が聞こえた。
「あ、ありがと・・・」
ガスッ!!
「ん?今何か聞こえたような・・・?」
レオンが何か聞こえた程度で攻撃をやめるはずもない。
詰めはきっちりと。殺れる時に殺っておけ。でないときっと殺られちまう。
これが唯一覚えている両親の言葉でもある。
数メートル飛ばされた亀は、運良く表向きに着地すると、人がそうするように首を数回左右に振ると、驚愕してレオンを見つめる。
レオンは、蹴り飛ばした亀を見つめると、もう一度近づいてみる。
「まさかお前が話したわけじゃあないよな?」
バカバカしいと思いつつ亀に話しかけてみる。
「そのまさかです」
「な!?か、亀がしゃべった!?」
今度はレオンは驚愕した。
しゃべる亀!一体いくらで売れるのか!?普段計算などはまったくせず、本能の赴くまますごしているレオンだが、そういったことへの頭の回転は常人のそれを遥かに上回る。
( お、落ち着けレオン。お前は落ち着いてこの話せる亀を捕獲するんだ。そうすればきっとしばらくは遊んで暮らせる!しかし売っぱらっちまう方がいいのか?こいつを引き連れ各地を回って末永く稼ぐのか・・・くぅ!これは迷うぜ! )
高速に打算を働かせているレオンをよそに、カモは亀はレオンに話しかける。
「あの子供達に苛められてたんですが、助けて頂いてありがとうございます。おまけに少々荒っぽかったですが、仰向けの私を元に戻して頂いて・・・本当に一体どうお礼を言えばいいのか・・・」
( ん?なんだこの亀。先のガキ共に苛められてたのか。そうか・・・それなら話は早い! )
「あぁ。そんなことは気にすんなって。蹴り飛ばしたのは悪かったな。どうにも俺は大雑把なんだ」
「そうだったんですか、ですよね〜。悪い人が亀なんて助けないですよね〜」
勿論だ!
力強く言い放つレオン。
「そこでお礼がしたいのですが、少々私に付き合っていただけますか?」
( お礼?望むところだ。むしれるだけむしりとって、その後見世物小屋へ売っぱらって一儲け。これで決まりだな )
またも高速で儲けを弾き出し、快い返事を返す。
「あぁ全然かまわないぜ?で、どこへ行けばいいんだ?」
「ありがとうございます。それじゃぁこっちに来てください」
そう誘われ、亀について行く。
すると亀は海の中へと入っていこうとするでは無いか。
「おいおい待ってくれよ!おれはここからはいけないぜ?どうしろってんだ!!」
このまま逃げられてはたまらないと思い、力の限り叫んだ。
「あ、すみません。そういえば人間は海へは入れないんでしたね、忘れてました」
( チィ!所詮亀は亀の脳しかもってないってか?そんな事忘れてんじゃねぇ!って海の中!?そんなの無理じゃん!! )
レオンが戸惑っていると、亀が引き返してくる。
「ちょっと私の甲羅の中から注射器を出してもらえませんか?あ、注射器って分かります?鋭い針のついた細い管です」
( んだよ!助けてもらった俺に仕事させやがって。めんどくせぇな・・・しかし礼を貰う為だ。がまんしなきゃな )
まったく似合わない『我慢』という言葉を思い浮かべ、言われたとおりのモノを取り出す。
中には紫色の液体が入っているようだ。
「それを私の首筋に刺して、後ろの突起を押し込んで下さい。そうするとその液体が私に注入されますから」
( ふぅん変わった亀だな。針で刺されるのが趣味だなんて・・・っと )
「これでいいか?」
まったく躊躇せず亀に注射器を打ち込み、怪しい紫色の液体を全て注ぎ込む。
「あ、ありがとう・・・ご、ござ・・・ぐ・・・あ、あ、あああぁぁぁぁ!!!」
亀が突然叫びだし、体を震わせている。
「ガアァァァァ!!ゴボッ!ガボボッ!!!」
「お、おい!大丈夫か!?(俺の稼ぎよ!)」
ちょっぴり本音が出たようだが、取りあえず震える亀に声をかける。
しかし亀は答えられず、更に体を震わせると気合とともに体を緊張させた!
「はぁ!!」
その気合で、亀の周りの砂が巻き上げられる!
「げほっげほっ!畜生が!なんだってんだよ!!」
毒づくレオン。
程なく舞い上がった砂が落ち着き、砂煙の無効から何かが現れる。
「なんだ!?でけぇ!!」
現れたものは異形の生物だった。その大きさは全長3メートル、高さもレオンの胸の辺り程はあるだろう。
「さぁお待たせしました。私の背中につかまるところがあります。そこにつかまってください」
「な!?お前さっきの亀か!?」
「はい。ささ、早く」
でかくなりすぎである。
レオンは内心ちょっとびびりながら、更なる金儲けの予感を感じられずにはいられなかった。
しゃべる上に巨大化変身。その予想される利益に体が震えるのが分かった。
( もう死ぬまでこいつで稼げるぜ・・・楽して金儲け・・・あぁ・・・最高の気分だ! )
その震えが全身に及んだのが亀(と呼んでいいのか?)にも伝わったらしい。
「あ、やっぱり怖いですか?」
「いや、感動しちまったんだよ・・・早く行ってくれ(そのお礼の元へ)」
普段なら侮辱されたと思い込み、全殺しの刑に処するところだが、今のレオンは上機嫌。
素直な気持ちを言葉に表し先を促す。
「分かりました、じゃあ行きますよ?呼吸は出来ると思いますからご心配なく。ただ途中で手を離すとそのまま海の中で逝っちゃうんで注意してくださいね」
「あぁわかった」
その他軽い注意を聞いて、亀の甲羅にしっかりと掴まった。
いよいよ待望のお礼への道が開かれたのだった。

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( こ・・・これはぁ・・・ )
亀(と呼んでいいのかは疑問だか)にしがみついて海中へと挑んだレオンは驚愕した。
なぜか亀の甲羅付近は空気があり、呼吸が出来るのだ。
( ふふっ。さらに、さらに商品価値が上がるな。ただの亀かと思いきや、話しは出来るし変身するし。おまけに水の中でも呼吸が出来るとは・・・あぁ・・・気を失いそうだぜ )
どんどんと儲けが膨らむのを感じ、これからの人生設計を立ててみる。
( 取り合えずこいつを売って1度でがっぽり稼ぐか、見世物にして骨の隋までしゃぶり尽くすか・・・どっちが得なんだろうな?・・・いや、待てよ。見世物にするには客を扱わなきゃぁダメじゃないか!?そんなの面倒くせぇな。よし!やっぱりここは、こいつを売っぱらってがっぽりの方向で決まりだ!その後は・・・ )
「・・・さん。レオンさん!」
突然亀(ということにしてください)に声をかけられ、現実に引き戻される。そしてまたレオンの表情が恍惚に包まれた。
目の前には海中だと言うのに荘厳な城が建っていたのだ。
「着きましたよ、ここが招待したかった場所です。竜宮城といいます」
「あぁ・・・すっげぇな」
( すごい・・・すごすぎる・・・神は俺にいったいいくら稼がせようってんだ?この情報も頂きだな(w )
「ささ、どうぞ中へ」
亀はそう勧める。
「中へって言ったってまだここは海だろ?出たら死ぬだろう」
当然の疑問を亀にぶつける。
「いえ。ここはもう大丈夫です。結界を越えましたから人間にも呼吸は出来ますよ。きっと中では宴の準備が整っているはずです。さぁ中へ」
そうまで言われると亀から降りるしかない。レオンはびびってると思われるのが何よりキライだ。
「おう。じゃあ行ってやるさ」
若干強がってレオンは亀から飛び降りる。
すると体はゆっくりと降下し、海底に着地した。
「おい、ここは水の中なのか?なんだか体かふわふわするんだが・・・?」
「ご名答。海中ですよ。普通の、ではありませんがね」
亀は少々得意げに言いつつもったいぶる。
「おい亀よ。俺をなめんなよ?はっきりといいやがれ!どうなってんだよ?」
レオンは馬鹿にされたと思い、半ギレで亀に詰め寄る。
「す、すみません。では説明させていただきますね(汗)ここは確かに海中ですが、結界を越えた時にその者の体に特殊な膜を張り、地上で呼吸するのと同じように海水から酸素だけを取り出し、その被験者に吸収されるようになってます。最先端の技術ですね」
レオンにはサパーリ分からなかった。が、理解できなかったことを知られるのが我慢できなかった為、
「やっぱりな」
と、つよがってしまった。
「おぉ・・・今の時代でこの説明だけで理解できるとは・・・流石レオンさんですね」
亀もあっさりと騙された。
「あたりまえだ。ほれ、さっさと案内しろ」
突っ込まれてハッタリがばれるのを恐れ、レオンは案内を促す。
「あぁそうでした、さ、こちらです」
そういうと、亀は呼び鈴を鳴らす。
『はぁいどちらさまですかぁ?』
なんと海中に、しかもこの時代にインターフォンが!!
     ・・・[言ってなかったけど、このころはちょうど江戸時代初期。犬様サイコ−!とか、年貢がきつくてのう・・・とかの時代です]
( は、箱から声が・・・びびるな、びびるなレオン!おれは強くてカコイイ男だぞ!びびっちゃ負けだー! )
何とか負けず嫌いな精神で平静を保つと、現状を維持。
「私です。D・E・Sタートルタイプα試作機2415です。先程連絡した固体を一体確保しました。開門を願います」
意味の分からないことをいくつか述べる亀。
当然レオンも意味不明。
( なんだ?今こいつ確保とか言わなかったか?さっきも被験者とかいってたし )
ちょっとレオンは疑問に思ったが、目先の欲に冷静な判断を下せないでいた。
( まぁいいか。取り合えず油断させておいて一気に制圧しちまえば利益は確定されている。ふふ・・・ふははははは!あーっはっはっはっはー!! )
もう何も見えていない。
流石レオン(?)
「さ、開きましたよ。どうぞ中へ」
「ん?あぁそうだな」
ニヤついていたレオンはがんばって表情を戻し、亀につれられ竜宮城の中へと入っていった。



『ようこそ!深海の秘境・竜宮城へ!!』
レオンが中へ入ると、正面ホールで盛大な拍手と共に迎えられた。
( うひょお!び、美人が両手で数え切れねぇ!取り合えず暫くは女に困ることは無いな♪ )
確かに顔立ちが整った女性は沢山いた。しかし・・・
( ん?なんだ?俺に見せる為に背中の開いた服を着てるんだと思ったらなんてこった!こいつら・・・
背ビレがあるじゃぁねぇか!!
ちぃっ!こんな女は抱けねぇよ・・・売物決定だな )
そう、半魚や人魚ばかりだったのだ。
あいにくレオンは人間にしか興味が無いので、速攻で売り物リストへと追加した。(鬼畜)
そんな中、一際目立つ女性が現れた。
見目麗しく、明らかにほかのものとは違う目をしている。
( ぐ・・・こいつは・・・一筋縄ではいかなさそうな相手だな・・・間違いなくここの幹部〜ボスクラスだ。まぁいざとなったらぶっ殺しゃあいいだけか・・・かなりの上玉だけど・・・背ビレとかいらねえっての )
悪魔の計画を頭に描きつつにこやかにその女性に近づく。
その女性はレオンの想像どおりだった。
「ようこそ竜宮城へ、レオン様。私はここの長、名を乙姫と申します。このたびはうちの亀がたいそうお世話になったようで・・・そのお礼にここで存分に楽しんでいってくださいな」
「あぁ、楽しませてもらうさ」
レオンはそっけなく答えると、素早く城内の物を物色する。
( ほぅ・・・かなりいい物つかってるな、あれなんか純金だろ?あれ一個で3年くらいは遊んで暮らせるぜ。ヒヒッ、笑いが止まんねぇなぁ )
「さ、食事の準備が出来ております。どうぞこちらへ」
微笑みながらレオンを案内する。見るもの全てを虜にする乙姫の微笑。しかしレオンには通じない。
( お?ヒレとか付いてねぇじゃん!でもこいつ・・・人間か?まぁいいや、食後のデザートってとこだな )

「ふぅ。食った食った。で?この後なんかあんのかい?乙姫さんよ」
横柄な態度で乙姫に話し掛ける。
「いぇ、これと言ってはないのですが、レオン様のお気がすむまで食事とお酒、舞の見物などでお楽しみ下さい。我々は何時まででもお酌させて頂き、何時までも舞いつづけます故」
「そうか。飯も美味いし女も顔はキレイだからな。じゃあ暫く居させてもらうさ」
( いつまででもいいってことはじっくり下調べできるぜ。あぁでも・・・ここはここでいいかもな。全員俺に従順だし(w それに全部タダだしな )
レオンは多少計画(なんてたいそうなモノではない)の練り直しをすることにした。

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+++その夜+++

「さて、いろいろ物色させてもらうか」
レオンはひたすら飲み食いした後、案内された凄まじく豪華な寝室で一休みし、「仕事」へと取り掛かることにした。
「あれ?カギがかかってるよ。まいったね〜俺は監禁状態デスカ?ぷぷ」
普段のレオンなら楽勝でキレている所だが、酔っ払いなため気分は上々。
「フフフ〜ン」
バキッ!
鼻歌交じりに掛けられたカギを破壊すると、外へ出る。
見張りはいないようだ。
まさか内側から鍵を壊せるとは思ってもいなかったのだろう。
( さて、こっからは静かに行動しなきゃな。宝物庫は大抵奥の方ってのが相場だからね〜 )
気配を殺し、ずんずん奥へと進んでいく。
と、わずかに明かりが洩れている扉を前にレオンは立ち止まる。彼の名前が聞こえてきたからだ。
当然のように盗み聞きを開始。
「ふぅ、今日の料理は80点ね。及第点だけどシェフに一言言っといて頂戴」
「はい。かしこまりました乙姫様」
どうやら会話しているのは乙姫と亀らしい。
「あのレオンって男、かなりいい素体ね。頭は悪そうだけど肉体の強度は基準値を大きくクリアしてるわ。いい拾い物ねα2415」
「はい。軽くスキャンしただけでも肉体強度・精神波・環境適応能力の値が尋常では無かったですから。上手く話しに乗ってこなければ第三形態になってでもつれてきましたよ」
( なんの話しをしてるんだ?肉体強度とか・・・もしか俺って騙されてる?ププ(笑) お互い様だがなぁ! )
酔っ払いでもレオンの脳は正常っぽく動いていた。
ハナから怪しいとは思っていたので、ショックは皆無だ。
「で、実際に移植するのは何時頃になりそう?出来れば早めに実験結果を出したいのよ」
「はい。分かっております。明日の2200時には準備が整う手筈です。そこからウイルスの同化・増殖に12時間程度。拒絶反応がでる筈ですからそれを収めるのに2時間。素体はそこから睡眠に入るので、完全に同化するのはそれからおおよそ10時間程度。つまり何も問題がなければ今から48時間後には結果が出るはずです。」
「そう・・・じゃあくれぐれも悟られないように対応しなさい。私はそろそろ休みます」
「はい。それはもちろん。では、失礼致します」
と、亀がゆっくりとこちらに向かってくる。

( やっべ、隠れなきゃ!えぇとどうする? )


LiveSection!!
1.隠れて上手く乗り切る。
2.偶然出会ったフリをする。
3.ここでバラす。

( あぁぁ・・・3番とか一番楽そうだけどな・・・まだマズイヨ。しかたねぇ1番で行くか )

隠れることを決意してハイジャンプ。レオンは天井に張り付いた。
NINJAか?チミは。

と、入れ違いで亀が出てくる。
「ごゆっくりとお休みくださいませ」
一言掛けると亀が去っていく。
( うお!二足歩行!?マジであいつ高く売れるって!!早いとこケリつけてさっさとおさらばしなきゃな・・・ )
亀が視界から消えるのを待ち、廊下に降り立つ。
レオンは更に奥へと進み、目的の場所に到達した。
( ここだな・・・鍵は・・・っと懸かってないのかよ、無用心だなぁ(w 俺みたいなのが来たらどうすんだっての )
鍵を開ける手間が省けたレオンはうっすらと笑みを浮かべ、そっと中へ進入する。
扉の中にはまた通路が続いていた。そして通路の真ん中辺りにモニターが立っている。
( もったいぶりやがって、うぜぇんだよ )
やっぱりキレながらなおも進むと突然、辺りが真っ赤に染まる。と同時に無機質な声が響く。
『警告します。ここは最重要区間へと続いています。あなたから許可されたIDは確認できませんでした。立ち入りを許可されていない者は即刻排除します。IDを提示してください』
「なんだぁ!?」
先程のモニターにはCAUTION!の文字が。しかしレオンにアルファベットは読めない。
『再度警告します。IDカードを提示してください。カウントをはじめます。5・・・4・・・』
もちろんレオンはそんなものは持っていない。
果たしてどうするのか?
「うるせぇ!」
一言叫ぶと、モニターにコブシを突き出す。
バキィ!
『ガ・・・ID・・・アイD・・・を・・・警コク・・・ガガ・・・』
なんとコブシ一つでセキュリティーを無効化してしまうレオン。
もう何でもアリである。
騒いでいるモニターを尻目に更に奥へと進む。
やがて廊下は終わり、大きな部屋に突き当たる。
「ここが最奥部か・・・さてお宝はどこですかっと」
しかし目当てのお宝は見当たらず、部屋には濁った水が入っている巨大な円柱型の水槽だけだった。
中身はよく見えないが、何か人型らしいものが入っている。
どうやら時々動くので、生物らしいことは分かるが・・・
「んだよ!お宝なんてねーじゃん(怒)折角苦労してここまで来たってのによぉ!」
「もちろんですよ。レオン様」
「!?」
突然声を掛けられ、レオンはマジ焦った。
「誰だ!」
月並みに叫んで振り返るとそこには乙姫が立っていた。
「なんだあんたか・・・」
( やっべー・・・もうバレちまったよ。ちょっと焦りすぎたか?どうする?他のやつが来る前にやっぱバラすかな? )
そんな物騒なことを考えているレオンを尻目に乙姫が話し出す。
「ここに宝はありませんが、ある意味これは陳腐な黄金以上の価値があります。中をご覧になりましかか?」
最重要区間に入り込んだレオンを咎めたりせず、そんな事を言ってくる。
何か裏がありそうだ。
当然危険に対して敏感なレオンは今の状況がかなりマズイ事はわかっていた。
そして乙姫が恐らくは時間を稼いでいることも。
しかしあえてレオンは乗ってみる。
「いや、水が濁ってて中はよく分かんなかったぜ。見せてくれるのかい?」
「お望みとあらば・・・」
そういうと、水槽の近くのパネルを手早く操作する。
すると静かに水槽の水が抜けていく。
そこに現れたのは、灰色の肌を持ち、右手に大きな鉤爪をもつ体長2メートルほどの不気味な生物だった。
「なんだ・・・こいつは・・・」
( ほ、本格的にヤヴァくねー?あいつが動き出したらおれ命がヤベーよ )
相手の持ち駒に脅威を感じ、今のヤバさがようやく理解できてきたレオンは、逃げ道を探す。
「何をお探しですか?レオン様」
そう乙姫が言った瞬間、入ってきた扉が音を立てて閉じる。
他に出入り口は・・・無い。
「クソ!おれをどうしようってんだ!?あぁ?殺すか?それともさっき亀の野郎と話してた通り改造すんのか?はっきり言ってみろやクソアマがぁ」
なんと口の悪い主人公だろうか・・・
しかし乙姫は多少驚いたように片眉をピクリを上げただけで、レオンの口調には何も言わなかった。
「そこまで知ってるなら話しは早いですね。では・・・貴方に選ばせてあげましょう。ここで逆らってあっさりと死ぬか。それとも実験体になって強靭な生命体として生き長らえるか・・・。さぁどうしますか?あなた死にたいですか?それとも強くなりたいですか?まぁ自我は崩壊しますが・・・フフッ」
理不尽な問いである。
死にたいと思っている人間でも、自我を崩壊させられ、得体の知れない化け物に変えられるなら逃げ出すだろう。
まして相手はレオンである。
当然ブチ切れですよ。

「あぁ?お前誰に向かって口聞いてんだよ?たかが魚の分際で。おれはレオン様だぞ?そこんとこ分かってんのか?答えはどっちも否だ。おれの答えはお前を殺して亀を脅して宝を奪ってがっぽり一儲けさ。ということでキレイな乙姫さんよ、死んでくれ!」

やはり主人公とは思えぬ台詞を吐き捨てると、乙姫に向かって走り出した。

「ふっ愚か者め!たかが生身の人間のがわらわを殺す?面白い。やってみるがよい。その前にこいつと戦ってもらうがな」
乙姫の口調ががらりと変わり、先ほどのパネルをまた操作する。
すると灰色の巨人は目を開き、水槽をぶち破って外に出てきたのだ!

「げっ!?ヤベーってそいつは!」

弱いものにはかなり強いレオンも、得体の知れぬ巨大な生物に圧倒され、走っていた足を止めてしまった。
「この者はプロトタイプタイラントα0021じゃ。まだ試作品とはいえ肉体強度は普通の人間の5倍。反応速度は3倍はある。貴様に倒せるかな?愚かなレオンよ」
その物言いに更にレオンは切れる。恐怖心が粗方吹き飛ぶほどに。
「んだとゴルアァ!誰が愚かだ?てめぇ待ってやがれ!ぜってーブチ殺してやるよ」
氷さえ砕けそうな冷たい声色を聞き、乙姫も多少気おされる。
「やれるものならな。さぁ行け!P.タイラント!あヤツをゴミのように引きちぎるのだ!」
その命令を聞き、化け物P.タイラントは聞く者全てを竦ませるような雄たけびを上げ、猛スピードでレオンに襲い掛かる。
「なんとぉぉぉ!」
かろうじてその初激をかわすと、一旦距離を取るレオン。
( 糞がぁ!啖呵を切ったはいいが、やっぱ見た目同様半端じゃねぇな・・・動きは速いがなんとか対処できねぇ速度じゃねぇ・・・取り合えず何か武器を・・・ )
レオンが手近な武器を探しながら、次々とP.タイラントの攻撃をかわしているのを見て乙姫は驚愕した。
( やはりこの人間只者じゃあないようね・・・今のタイラントの速度が完生態の50%程度なのを差し引いても、普通の人間にどうこう出来る速度じゃないはず・・・惜しいわ・・・本当なら生け捕りにしたい所ね・・・ )
しかし殺す気で放っている攻撃をかわすレオンに対し、命令を変更して殺さない程度に痛めつけるようにすると、攻撃がまったく当たらなくなる可能性が高い。
乙姫は迷っていた・・・そんな中。

ゴッ!!
「ぐあぁ!」
鈍い音と共に、一つの悲鳴。
避け続けていたレオンに遂にタイラントのコブシがめり込んだ。
そのまま壁まで吹き飛ばされダウン。

「待て、P.タイラントよ」
乙姫は静かにそう命令すると、倒れたレオンに近づいた。
( やはり人間は人間か・・・一発喰らえば同じ事。ちょうどよいわ。このまま培養液に浸けてやる )
さらに乙姫はレオンに近づいた。

「アバヨ、乙姫」

そんな声が衝撃と共に聞こえた気がする。
先ほどまで床に無様に倒れたレオンだった筈だが、なぜか鉄パイプを握り乙姫にゆがんだ笑みを乙姫向けている。
そして彼のつかんでいる鉄パイプは乙姫の顎から生えていた。
これ以上ないほどあっけなく、乙姫は倒れた。

「ふぅ、危なかったぜ。やられたフリをするのは良かったけど、まさかあんなに衝撃が強いとはな。」

レオンはタイラントを倒すのは無理と踏み、直接乙姫を狙う作戦に切り替えた。
そして彼女を油断させる為わざとタイラントから攻撃を食らって見せたのだ。
これがレオンが単体で鬼退治が出来た理由の一つ。
異常なまでの打たれ強さ。
もう一つはもちろんそのずる賢さではあるが。

もちろん彼女がレオンを殺したくないのを見越しての事だった。
そしてレオンは倒した乙姫を覗き込み、うぇっとうめき声を漏らした。

「やっぱ人間じゃ無かったか・・・にしても緑の血ってのも気持ちわりぃな・・・」

顎から脳天に突き抜けた鉄パイプにはくすんだ緑色の液体と、脳漿などがこびりついていた。
もはやあの美しさは無く、醜悪に歪んだ笑みを佇ませ目を見開いて絶命していた。

「さて、あの化け物が動き出さないうちに何とかあの亀を手に入れてずらかるか・・・その前にここの扉を開けなきゃな・・・」
と言い、扉に近づく。
と、突然辺りを真っ赤に染めるランプが点灯した。
「なんだ?」
突然様変わりした辺りを見渡し、レオンは焦る。
『警告・警告。現場管理者乙姫の生命反応ロスト。緊急事態により、クラスSSS(SpecialSecuritySystem)が発動します。活動中の研究員は速やかに最重要B.O.Wの資料を焼却/処分し、脱出して下さい。この研究施設 コード名竜宮城は15分後に爆破されます。警告・警告・・・』
「爆破!?ざけんじゃねぇって!そんな事やられたらおれのお宝が沈んじまうじゃあないか!コラ!止めやがれ!聞いてんのかオイ!」
もちろん相手は機械。聞いているはずも無い。
「ど、どーすりゃいーんだ!?」
流石に焦るレオンは、ふと背後に気配を感じた。
振り返らずにとっさに右へと身をかわす。
そこに大きな鉤爪が振り下ろされたのはほぼ同時だった。
P.タイラントである。
「な!?命令が無きゃ動けねーんじゃ無かったのか!畜生!」

更にレオンは焦る。
この緊急時の糞忙しい時に、こんな化け物の相手なんかしていられるはずも無い。
更にタイラントはレオンを執拗に追い、でたらめに腕を振り回す。
先ほどはとは違い、威力も速度も上がっていた。

( く、まずい!このままじゃあ本当に死んじまう・・・ )

襲い掛かるコブシと鉤爪を何とか交わしながら部屋の奥へと追いやられていくレオン。
しかし、床から出ていたチューブに足を取られ、倒れそうになる。
が、何とか立て直す。
当然それは大きな隙となり、また、タイラントにとっては大きなチャンスとなった。
タイラントは一歩大きく踏み込むと、丸太のような足をレオンに叩きつける。

「がはっ!」
かわせなかったレオンは先ほどと同様、またも壁まで吹き飛ばされてしまった。
『ガガガ・・・時空転・・・シス・ム起動・・・転移先の時間軸・・・1996-02-・・・座標・・・N3XX・1YB・で・・・よろしいですか?』
レオンの背後で機械的なくせに妙に官能的な声が鳴る。今の衝撃で誤作動したようだ。
( ぐ・・・今のは結構効いたぜ・・・こ、呼吸が )
したたかに背中を打ち付け、呼吸が出来ないレオンに、ゆっくりとタイラントが近づいてきた。
( や、やべぇ・・・マジでピンチだ・・・くそう!こんな所で死ぬんならもっとXXXとか****とかやりまくっとくんだったぜ・・・ )
『よろしいですか?・・・よろしいですか?・・・よろ』
「あぁうるせぇな!何でもいいから黙ってろよ!!」
レオンに尋ね続ける機械に対してそう吐き捨てる。

『了解いたしました。即座に転送します。良い旅を・・・』
レオンの周りにうっすらと光の壁が現れた。
タイラントが猛然と突っ込んでくる。
( あぁアバヨ、おれの短い人生・・・16年か・・・やり残した事が山ほどあるぜ・・・マッタクついてねーなー・・・ )
『時空間転送を開始します』
タイラントは鉤爪のついた手を大きく振りかぶり、走ってきた勢いをそのまま鉤爪に乗せレオンに打ちつけた!!
ドッゴォ!!

『転送完了しました。またのご利用を・・・』
やはり妙に官能的な機械音声がそう告げた。

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200X-10-06  某所にて・・・

「コレがおれの本当の生い立ちさ」
「ふぅん・・・作り話にしちゃそこそこの出来ね。でもあたし知ってるわよ?これ、日本の昔話でしょ?なんか最後にウラシマがおじいさんになっちゃうヤツ」
バーで男女一組が語り合っている。
「・・・ふっ俺としたことがつまんねー話を・・・」
「ふふ、それでも結構楽しかったわ。また聞かせてね、・・・」
女の声は小さく、名前は聞き取れなかった。
「あぁお前がそう望み、俺の気が向いたらな・・・」
男はは手にしたバーボンを一気に飲み干すと席を立つ。
「何処へ行くの?」
女が尋ねる。
「そろそろ仲間との待ち合わせだ。じゃあな」
「次はいつ会える?」
「もうお前とは会わねーよ」
「え・・・どうして?」
「飽きた」
そういうと男は席を立つ。
「そう・・・」
うっすらとその背中に悪の一文字が見えそうである。
「じゃあな」
「えぇ」
それきり黙って立ち去る男に女は一言声を掛ける。誰にも聞こえない程度の声を。
「私は信じてるわよ。さっきの話。またね、レオン」
深めのスカーフに隠されたその女の顎には、太い筒状のものを突き刺されたような傷跡があった・・・

ハイどーも。レオン生い立ちでしたー
もう最後とかよくわかんないですね(笑)
一応エピローグと、本文の間に数年ブランクがありますが、これはまた別のお話・・・
ちなみにコレ、BIOスターで行こう!様へ投稿した作品に加筆・訂正したものです。
無期限更新停止されたので、引き上げてきました。
新作書くヨユーなんてないっす(^_^;)

じゃーまた新作で。
ホントに出るのか??

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